2.10.1 浴室・シャワー室の設計標準
(1)共通する事項
① 出入口の有効幅員、空間の確保等
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出入口の有効幅員は、80cm以上とする。
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床には段を設けない。
② 戸の形式
-
出入口に戸を設ける場合、戸は、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないものとする。
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戸の形式については、2.8.1 利用居室の出入口の設計標準(2)を参照。
③ 部品・設備等
ア.浴槽
- 浴槽は濡れても滑りにくく、体を傷つけない材料で仕上げる。
イ.シャワー
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原則としてハンドシャワーとする。
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浴室用車椅子、又はシャワーチェア等を備える。
ウ.浴室の手すり
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浴槽に入るための階段付近には、出入りのための手すりを設ける。
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手すりは原則として水平及び垂直に取り付ける。段がある場合には、斜めに手すりを取り付けることができる。
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その他 2.14 A 手すりを参照。
エ.洗い場及びシャワーの水栓金具
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水栓金具は、レバー式等の操作のしやすいものとする。
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サーモスタット(自動温度調節器)付き混合水栓等、湯水の混合操作が容易なものとする。
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サーモスタット(自動温度調節器)には、適温の箇所に認知しやすい印等をつける。
留意点:部品・設備等のわかりやすさ
- 弱視者(ロービジョン)や色弱者の視認性や、高齢者のわかりやすさを確保するため、浴槽、水栓金具、洗面器等の部品・設備等と壁の仕上げ材料は、部品・設備等と壁の色の明度、色相又は彩度の差の確保に配慮して選定することが望ましい。
留意点:水栓
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点字を読めない視覚障害者も多いため、点字表示とともに、浮き彫り文字等を併用する等の工夫が望まれる。
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洗い場での動作や、とっさの時に、水栓金具で怪我をしないよう取り付け方法、取り付け位置、水栓金具の形状に配慮する。
④ 仕上げ等
ア.床の仕上げ
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床は濡れても滑りにくく、転倒時や床に座ったままで移動する場合にも体を傷つけにくい材料で仕上げる。
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浴室用車椅子等での移動の妨げにならないよう、床は水はけの良い材料で仕上げ、可能な限り排水勾配を緩やかにする。
イ.ガラス
- ガラスについては、2.3.1 建築物の出入口の設計標準(2)を参照。
⑤ 案内表示、情報伝達設備等
ア.室名表示等
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室名表示については、2.8.1 利用居室の出入口の設計標準(4)を参照。
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表示板等については、2.14 G 案内表示を参照。
イ.シャンプー等の容器
- シャンプー・リンス・ボディソープ等の容器は、視覚障害者が手で触れて区別することのできるものを設けることが望ましい。
(2)車椅子使用者用浴室
① 設置数、配置
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不特定多数の利用者が利用する浴室を設ける場合には、そのうち1以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上)に、車椅子使用者が円滑に利用できる浴室(以下「車椅子使用者用浴室」という。)を設けることが望ましい。
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公衆浴場、宿泊機能を有する建築物では、異性による介助に配慮し、男女が共用できる位置に、個室タイプの車椅子使用者用者も利用できる浴室(以下「貸し切り浴室」という。)を1以上設けることが望ましい。
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公衆浴場、宿泊機能を有する建築物の共同浴室では、共同浴室の一部に、車椅子使用者も利用できる洗い場・浴槽を設けることが望ましい。
② 空間の確保等
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出入口から洗い場・浴槽までの通路及び洗い場には、車椅子使用者が円滑に利用することができるよう、十分な空間を確保する。
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車椅子使用者が360°回転できるよう、直径150㎝以上の円が内接できるスペースを設ける。(設備等の下部に車椅子のフットレストが通過できるスペースが確保されていれば、その部分も有効スペースとする。)
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出入口前後には、車椅子使用者が直進でき、方向転回できるよう、140cm角以上の水平なスペースを設ける。
③ 部品・設備等
- 浴槽、シャワー、手すり等を適切に配置する。
ア.浴槽
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浴槽の深さは50cm程度、エプロン高さは40~45㎝(車椅子の座面の高さ)程度とする。
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浴槽の縁には、車椅子から移乗できる移乗台を設ける。移乗台の高さ及び奥行きは、浴槽と同程度とし、幅は45㎝以上とする。移乗台は取り外し可能なものでもよい。
留意点:洗い場と浴槽
- 車椅子の座面と同じ高さの洗い場とした場合、洗い場から浴槽に排水が流れ込まないように、浴槽の縁、縁からの水勾配、排水溝の工夫等配慮する。
イ.シャワー
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シャワーヘッドは垂直に取り付けられたバーに沿ってスライドし高さを調整できるものか、上下2箇所の使いやすい位置に、ヘッド掛けを設けたものとする。
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シャワーホースの長さは150cm以上とすることが望ましい。
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洗い場には浴室用車椅子又はシャワーチェア等を備える。
留意点:浴室用車椅子
- 浴室用車椅子には、介助用車椅子 (車椅子使用者が自ら操作することはできないが、入浴介助のしやすさ等に配慮された車椅子)と、自走式の車椅子(車椅子使用者が自ら操作することのできる車椅子)がある。
ウ.手すり
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出入口から洗い場や浴槽まで誘導するための手すりを設ける。
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洗い場には、シャワー使用中の体を支えるため、又は立ち座り動作のための手すりを設ける。
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浴槽への移乗台付近には、出入りのための手すりを設ける。
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貸し切り浴室では、浴槽内での立ち座りのための手すりを設ける。
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必要に応じ、洗い場から浴槽の周囲に、手すりを連続して設ける。
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手すりは原則として水平及び垂直に取り付ける。段がある場合には、斜めに手すりを取り付けることができる。
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その他 2.14 A 手すりを参照。
留意点:手すり
- 浴槽内にも手すりを設けることが望ましい。
エ.洗い場及びシャワーの水栓金具
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水栓金具は、動作の障害にならない位置に設ける。
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洗い場の水栓金具の取り付け高さは、浴室用車椅子等に座った状態で手が届く位置とする。
オ.緊急通報ボタン等
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緊急通報ボタンを適切な位置に設ける。
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緊急通報ボタンは、床に転倒したときにも届くよう、側壁面の低い位置にも設けることが望ましい。
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緊急通報ボタンは、ループやひもをつけたものとすることが望ましい。
④ 仕上げ等
- 貸し切り浴室では、浴槽の床が滑りにくいよう、床マットを貸し出すことができるよう準備する。
貸し切り浴室の例
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車椅子使用者用の洗い場を設けた大浴場、脱衣室の例
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設計例
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(3)車椅子使用者用シャワー室
① 設置数、配置
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不特定多数の利用者が利用するシャワー室を設ける場合には、そのうち1以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上)に、車椅子使用者が円滑に利用できるシャワー室(以下「車椅子使用者用シャワー室」という。)を設けることが望ましい。
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体育館や水泳場等のスポーツ施設等のシャワー室には、そのうち1以上(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上)に、車椅子使用者用シャワー室を設けることが望ましい。
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体育館や水泳場等のスポーツ施設等では、異性による介助に配慮し、男女が共用できる位置に、シャワー室を1以上設けることが望ましい。
② 出入口の寸法、空間の確保等
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車椅子使用者用シャワー室を設けたシャワー室、及び車椅子使用者用シャワー室の出入口前後には、車椅子使用者が直進でき、方向転回できるよう、140cm角以上の水平なスペースを設ける。
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通路や車椅子使用者用シャワー室には、車椅子使用者が円滑に利用することができるよう、十分な空間を確保する。
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車椅子使用者が360°回転できるよう、直径150㎝以上の円が内接できるスペースを、1以上設ける。(設備等の下部に車椅子のフットレストが通過できるスペースが確保されていれば、その部分も有効スペースとする。)
③ 部品・設備等
- シャワー、手すり等を適切に配置する。
ア.シャワー
-
シャワーヘッドは垂直に取り付けられたバーに沿ってスライドし高さを調整できるものか、上下2箇所の使いやすい位置に、ヘッド掛けを設けたものとする。
-
シャワーホースの長さは、150cm以上とすることが望ましい。
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浴室用車椅子又はシャワーチェア、ベンチ等を備える。
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車椅子使用者シャワー室(ブース)のベンチの高さは、床面から40~45cm程度とする。
イ.手すり
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シャワー使用中の体を支えるため、かつ立ち座り動作のための手すりを設ける。
-
手すりは水平及び垂直に取り付ける。
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その他 2.14 A 手すりを参照。
ウ.緊急通報ボタン等
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緊急通報ボタンを適切な位置に設ける。
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緊急通報ボタンは、床に転倒したときにも届くよう、側壁面の低い位置にも設けることが望ましい。
-
緊急通報ボタンは、ループやひもをつけたものとすることが望ましい。
車椅子使用者用シャワー室の例
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設計例
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シャワー室、更衣室の例
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(4)その他
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専ら高齢者が利用する施設、専ら障害者が利用する施設の浴室等は、利用者や入居者の動作等の特性及び介助の方法に応じた設計とする。
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これらの施設の浴室等の設計は、設計標準を参照しつつ、福祉施設の設計技術書も参照して、実情に合ったものとする。