便所・洗面所及び各便房の設計標準は、以下の節に示す。
2.7.1 便所・洗面所の設計標準
2.7.2 個別機能を備えた便房の設計標準
2.7.3 簡易型機能を備えた便房の設計標準
2.7.4 その他の便房の設計標準
2.7.1 便所・洗面所の設計標準(共通事項)
(1) 配置
- 同一建築物内においては便所の位置、男女の位置が統一されているとわかりやすい。
留意点:配置
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視覚障害者等にとっては、どこの便所でも利用方法が同じでれば、非常にわかりやすいため、同一建築物では、できる限り同じ配置、同じ部品を使用することが望ましい。
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階によって配置をかえる場合には、わかりやすく表示することが望ましい。
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知的・発達障害者等に配慮し、便房内の配置や案内表示はわかりやすいものとすることが望ましい。
(2) 出入口の有効幅員、空間の確保等
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車椅子使用者用便房が設けられている便所の出入口の有効幅員は、80cm以上とする。
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車椅子使用者用便房が設けられている便所内の通路には、車椅子使用者が方向転換ができるよう、140㎝角以上の水平スペースを設ける。
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床には段を設けない。
(3) 便所、便房の戸の形式
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車椅子使用者用便房が設けられている便所の出入口に戸を設ける場合には、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないものとする。
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手動式引き戸の場合、取っ手は棒状ハンドル式等、握りやすさに配慮したものとする。
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開き戸の場合、取っ手は大きく操作性の良いレバーハンドル式等とする。
(4) 部品・設備等
① 小便器
/images/2-7/image24.jpeg 男子用小便器のある便所を設ける場合には、そのうち1以上に、床置式の小便器、壁掛式の小便器(受け口の高さが35cm以下のものに限る。)その他これらに類する小便器を1以上設ける。
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男子用小便器のある便所が設けられている階ごとに、当該便所のうち1以上に、床置式の小便器、壁掛式の小便器(受け口の高さが35cm以下のものに限る。)その他これらに類する小便器を1以上設けることが望ましい。
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1以上の床置式又は壁掛式の小便器(受け口の高さが35cm以下のものに限る。)には、杖使用者等の肢体不自由者等が立位を保つことができるよう、手すりを設ける。
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上記の小便器は、便所の出入口から最も近い位置に設ける。
留意点:設備・備品等
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小便器の脇には、杖や傘等を立てかけるくぼみ、又はフックを設けることが望ましい。
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小便器の正面には、手荷物置き台を設けることが望ましい。
壁掛け式小便器の例
床置き式小便器の例
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② 洗面器、鏡
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1以上の洗面器には、杖使用者等が立位を保つことができるよう、手すりを設ける。
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手すりを設けた洗面器は、便所の出入口から最も近い位置に設ける。
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水栓金具は、センサー式、光感知式等、操作が容易なものとする。
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洗面器のうち1以上は、車椅子使用者の利用に配慮したものとする。
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洗面器下部に車椅子使用者の膝が入るスペースを確保する。
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吐水口の位置は、車椅子使用者の利用に配慮した位置(洗面器の手前縁から30㎝以内とすることが望ましい。)とする。
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鏡は洗面器にできる限り近い位置を下端とし、上端は洗面器から100㎝以上の高さとすることが望ましい。
留意点:洗面器等
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車椅子使用者に使いやすいものと、立位で使いやすいものと、高さの異なる複数の洗面器を設けることが望ましい。
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洗面器の脇には、杖や傘等を立てかけるくぼみ、又はフックを設けることが望ましい。
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子供等の利用の際に吐水口まで手が届きやすいよう、高さ55cm程度、奥行き45㎝以内、洗面台の端部から吐水口まで30㎝以内の洗面器も設けることが望ましい。
手すりを設置した洗面器の例 設計例
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③ 乳幼児用おむつ交換台
/images/2-7/image31.jpeg 施設用途や規模等を考慮した上で、便所(男子用及び女子用の区別があるときは、それぞれ1以上)には、乳幼児用おむつ交換台を1以上設ける。
④ ベンチ等
- 便房の近くには、介助者が待つためのベンチ等を設けることが望ましい。
⑤ 視覚障害者誘導用ブロック等
- 便所までの経路に視覚障害者誘導用ブロック等を設ける場合には、車椅子使用者用便房以外の便所に誘導する。
⑥ 照明、換気、音
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便所、便房の利用に支障のない明るさを確保できるよう、照明設備を設ける。
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発達障害等による感覚過敏への配慮として、十分な換気等による臭気等の対策や、音や光について可能な限り低刺激である設備機器の採用を行うことが望ましい。
留意点:照明器具の配置
- 照明器具を、便房、小便器、洗面器それぞれに対応させて配置することにより、各設備の位置を分かりやすくする等の工夫も考えられる。はずせるタイプとする等の配慮が必要である。
⑦ 非常警報
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便所及び便房内では聴覚障害者に非常警報がわかるよう、フラッシュライト等の光警報装置を設けることが望ましい。
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フラッシュライト等は、便房の戸を閉じた状態でも、便所内からその点滅が十分識別できる位置に設置することが望ましい。
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「光警報装置の設置に係るガイドライン」(「光警報装置の設置に係るガイドラインの策定について」(平成28年9月6日付け消防予第264号))では、光警報装置は白色光とすると示されている。
フラッシュライト(光警報装置)
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出典:公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編 令和2年3月 国土交通省総合政策局安心生活政策課 p.155)
設計例
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(5) 床の仕上げ
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床面は滑りにくい材料・仕上げとする。
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床面の材料・仕上げは、転倒したときの危険防止のため適度に弾性のあるものとする。
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排水溝等を設ける必要がある場合には、視覚障害者や肢体不自由者等にとって危険にならないように、配置を考慮することが望ましい。
(6) 案内表示
① 便所の表示板(標識)
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便所の付近には、便所があることを表示する表示板(標識)を設ける。
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表示板は、高齢者、障害者等の見やすい位置に設ける。
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表示板は、ピクトグラム等の表示すべき内容が容易に識別できるもの(当該内容がJIS Z 8210 案内用図記号に定められているときは、これに適合するもの)とする。
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男女が共用できる位置に設けた便所・便房の表示板等には、男女共用であることを、文字や図記号等により、わかりやすく示すことが望ましい。
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表示板等については、2.14 G 案内表示を参照。
留意点:男女共用の便房を示す表示
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障害の有無等が見えにくい・わかりにくい発達障害等では、異性の保護者や同伴者が、男女共用の便所・便房や広めのスペースのある車椅子使用者用便房に同行することに、他の利用者からの理解が得にくいことがある。
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そのため男女共用の便所・便房においては、「男女共用であること」をピクトグラ等でわかりやすく示す必要がある。
留意点:他の階や場所にある個別機能を備えた便房等の位置を示す案内表示
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利用したい便房が当該階の便所にない場合や使用中の場合等に、他の便房へ行くことができるよう、他の階や場所にある個別機能を備えた便房等の位置を、便所の付近に案内表示することが望ましい。
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便所内の混雑解消のため、ICT技術を活用し、便房の混雑状況を表示すること等により、他の階等に設置された便所に利用者を誘導することとも有効である。
便所の表示例(日本産業規格 JIS Z 8210)
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設計例
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② 便所の案内図
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便所の出入口には、男女の別、男女共用、便所内部の配置等をわかりやすく表示した案内図を設けることが望ましい。
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利用者を誘導するため、案内図には、文字や図記号等により、便房の位置・設備をわかりやすく表示する。
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案内図は、視覚障害者の利用に配慮し、点字等による表示や触知案内図を兼ねたものとする。また必要に応じて音声による案内・誘導を行う。
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触知案内図等は、床から中心までの高さが140cmから150cmとなるよう設置する。
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弱視者(ロービジョン)等にも配慮し、案内図は大きさや設置位置に配慮したものとする。
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案内表示については、2.14 G 案内表示を参照。
留意点:音声案内装置の設置
- 多数の視覚障害者が利用する施設の便所では、男性用・女性用の位置等を、音声により案内することが望ましい。
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一般便所内の音声案内装置には、人感センサーによる短い自動音声案内(装置の使い方の説明)の後、押しボタンを押すことで、便器や設備・ボタンの位置を音声により視覚障害者等に案内するものもある。
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音声案内を行う場合は、短い時間で簡潔に情報提供することに配慮することが望ましい。
設計例
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③ 便房の機能を示す表示板(標識)
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便房の出入口や戸には、便房の設備や機能を、文字や図記号等により、わかりやすく表示する。
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表示板は、ピクトグラム等の表示すべき内容が容易に識別できるもの(当該内容がJIS Z 8210 案内用図記号に定められているときは、これに適合するもの)とする。
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高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)の表示は、「多機能」「多目的」等、利用対象とならない方を含め、誰でも使用できるような名称ではなく、利用対象及び個別機能を表示するピクトグラム等のみで表示する、又は機能分散がなされている個別機能を備えた便房であれば、主な利用対象者を明確にする名称やピクトグラム等で表示する工夫を行う。
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表示板等については、2.14 G 案内表示を参照。
便房設備(機能)の表示例(日本産業規格 JIS Z 8210)
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設計例
〇個別機能を備えた便房の表示例(車椅子使用者用便房)
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設計例
〇個別機能を備えた便房の表示例(男女共用便房)
(オストメイト用設備を有する便房、乳幼児用設備を有する便房等)
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〇個別機能を組み合わせた便房の表示例
(利用想定等を十分に考慮し、車椅子使用者便房に個別機能を付加した便房)
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