2.14 A 手すり
(1)設置位置
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手すりは、高齢者、障害者等にとって、以下のために必要な設備であり、他の設備との組み合わせ、内容に応じて適切な場所に設ける。
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安全確保(転倒防止)
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立ち上がり補助(身体支持)
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移動補助
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視覚障害者等の誘導
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また、施設用途、設置場所、必要性等に応じ、適切な配置、形状及び寸法とする。
留意点:手すりの設置
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手すりを設ける際には、移動動作はもとより、他の設備との位置関係に留意する。
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例えば、手すりの近くに消火器や案内板等が置かれていたりすると、視覚障害者が衝突する危険があるため、このような配置は注意が必要である。
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形状、強度等に十分配慮する必要があるが、棚等を握りやすい形状とし、手すりとして利用できるようにする方法も考えられる。
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将来新たな手すりをつけることが可能なように、より広い範囲に、手すりの取り付けが可能な下地を入れて壁を補強しておくとより望ましい。
(2)設置方法
① 連続性等
- 手すりは、起点から終点まで連続して設けることが望ましい。
留意点:不連続の問題点
- 手すりが連続していないと、高齢者、障害者等の移動に困難が生じ、また、視覚障害者にとっては進むべき方向がわからなくなったりする可能性がある。
② 高さ
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- 手すりの上端の高さ(通路、階段)は以下の通りとする。
ア.通路(廊下、傾斜路)
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1本の場合 H=75~85㎝程度
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2本の場合 H=75~85㎝程度
H=60~65㎝程度
イ.階段
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1本の場合 H=75~85㎝程度
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2本の場合 H=75~85㎝程度
H=60~65㎝程度
③ 壁との関係
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壁との間隔は、4~5㎝程度とし、手すりの支持は、下側で行うことが望ましい。
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手すりが取り付く部分の壁の仕上げは、なめらかなものとすることが望ましい。
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弱視者(ロービジョン)や色覚多様性のある人の視認性や、高齢者のわかりやすさを確保するため、手すりや壁の仕上げ材料は、手すりと壁の色の明度、色相又は彩度の差の確保に配慮して選定することが望ましい。
④ その他
- 移乗等の動作補助用手すり(便所、浴室等)については、上記のほか、2.7 便所・洗面所、2.10.1 浴室・シャワー室の設計標準 を参照。
留意点:立ち上がり補助(身体支持)、移動補助のための手すり
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出入口部分の戸から離れた通路部分に設けた場合、動作の補助とならないため、適切な位置に設ける。
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手すりを連続設置した場合であっても、ベンチ、案内板、植木鉢、自動販売機、消火器等が動線上に設置されると障害物となり危険である。
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これらを防止するため、設計段階から設備・備品の設置場所をあらかじめ計画しておくことが望ましい。
(3)形状と材質
① 形状
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断面の形状は、円形等の握りやすいものとし、外径3~4㎝(小児用の場合3㎝)程度とする。
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衝突時の危険性を少なくし、服の袖の引掛りを避けるため、手すりの端部は、壁側に曲げることが望ましい。
② 材質
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肌触りがよく、耐食性、耐久性があり、維持管理の容易なものとする。
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階段、傾斜路等の手すりは、体重をかけた時に滑りにくいものとする。
留意点:手すりの材質
- 金属製の手すりは、冬期には冷たくなるため、高齢者や視覚障害者、肢体不自由者等、手すりを頼りに移動する者にとって支障となる。気温が低い場合でも冷たさを感じにくい材質とする。
<手すりと有効幅員> <壁面の設置例>
/images/2-14/image3.png" style="width:6.22431in;height:3.93264in" /
(4)点字表示
- 手すりの点字及び墨字(文字情報)表示の内容は以下による。
/images/2-14/image4.png" style="width:2.00278in;height:1.69861in" /・階段の手すりの端部:現在の階及び行き先の階等
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傾斜路の手すりの端部:現在の位置及び行き先の情報(●●室)等
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屋内の通路の曲がり角部分の手すり:現在の位置及び行き先の情報(●●室)等
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利用居室等の出入口付近の手すりの端部:利用居室等の名称(●●室)等
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点字表示は、はがれにくいものとする。
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点字表示については、JIS T 0921を参照。
利用居室の出入口付近の手すりの設計例
点字表示の例
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(5)施設用途による手すり設置の配慮
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医療施設、福祉施設等においては、利用状況を勘案し、屋内の通路にも手すりを設けることが望ましい。
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移動補助、立ち上がり補助(身体支持)の必要な高齢者、障害者等が主に利用する施設においては、転倒を防止する観点から、玄関ポーチ・玄関・廊下等にも連続して手すりを設けることが望ましい。
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視覚障害者等の誘導が必要な施設で、手すりを設置できない場合には、手すりに代わる音声案内装置の設置、又は従業員による誘導を行うことが望ましい。