H 視覚障害者誘導用ブロック等、音声等による誘導設備
(1)視覚障害者の誘導を行う経路
- 道等から点字・音声等による案内設備又は案内所に至る1以上の経路には、視覚障害者の誘導を行うために、線状ブロック等及び点状ブロック等を適切に組み合わせて敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設ける。(進行方向を変更する必要がない風除室内を除く。)(※1)
※1 以下の場合を除く。
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道等から案内設備までの経路が主として自動車の駐車の用に供する施設に設けるものである場合
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道等から案内設備までの経路が建築物の内にある当該建築物を管理する者等が常時勤務する案内所から直接地上へ通ずる出入口を容易に視認でき、かつ、道等から当該出入口までの経路が線状ブロック等及び点状ブロック等を適切に組み合わせて敷設し、又は音声その他の方法により視覚障害者を誘導する設備を設けたものである場合
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道等から点字・音声等による案内設備又は案内所に至る1以上の経路では、車路に近接する部分、段がある部分又は傾斜がある部分の上端に近接する部分には、視覚障害者に対し警告を行うために、点状ブロック等を敷設する。(※2)
※2 以下の場合を除く。
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勾配が1/20を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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高さが16cmを超えず、かつ、勾配が1/12を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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段がある部分若しくは傾斜がある部分と連続して手すりを設ける踊場等
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危険の可能性・歩行方向の変更の必要性を予告する部分、注意喚起を必要とする部分には、点状ブロック等を敷設する。
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視覚障害者等が施設を実際に利用する動線を十分に検討した上で、円滑な利用が可能な経路に視覚障害者誘導用ブロック等を敷設することが望ましい。
(2)視覚障害者導用ブロックの敷設
① 視覚障害者誘導用ブロック等の形状、色
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線状ブロックは、床面に敷設されるブロックその他に類するものであって、点状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものとする。
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点状ブロックは、床面に敷設されるブロックその他に類するものであって、線状の突起が設けられており、かつ、周囲の床面との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことにより容易に識別できるものとする。
留意点:視覚障害者誘導用ブロック等の種類
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線状ブロック等は、歩行方向を案内することを目的とし、移動方向を指示するためのものである。
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点状ブロック等は、前方の危険の可能性若しくは歩行方向の変更の必要性を予告することを目的とし、注意を喚起する位置を示すためのものである。
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視覚障害者誘導用ブロック等は、JIS T 9251(視覚障害者誘導用ブロック等の突起の形状・寸法及びその配列)による突起の形状・寸法及び配列のものとする。
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視覚障害者誘導用ブロック等の色は、黄色を原則とする。
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視覚障害者誘導用ブロック等を容易に識別できるよう、視覚障害者誘導用ブロック等とその周囲の部分(床仕上げ材料)の輝度比を確保することが望ましい。
留意点:色
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弱視者(ロービジョン)等が識別しやすいよう、視覚障害者誘導用ブロック等と周囲の床の仕上げは、輝度比を少なくともを2.0以上確保することが望ましい。
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輝度は輝度計により測定することができる。
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視覚障害者誘導用ブロック等に黄色を選択した場合でも、白や薄いグレーの床に敷設すると、弱視者(ロービジョン)等には見えにくい。これらの色を組み合わる場合には、色が際立つように縁取りを設ける等の配慮が考えられる。
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場所により視覚障害者誘導用ブロック等の色が異なると利用者が混乱するためなるべく統一する。特に敷地境界部分等で、道路と敷地の管理区分により色や材質が異ならないように配慮する。
留意点:視覚障害者誘導用ブロック等の材料
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視覚障害者誘導用ブロック等の材料には様々なものが考えられるが、採用にあたっては周囲の床の材料との対比、視覚障害者が使いやすいか、等に配慮する。
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金属製の視覚障害者誘導用ブロック等は、弱視者(ロービジョン)には色の違いがわかりにくい場合があること、使用する部位によっては雨滴によりスリップしやすいこと、施工上の精度が悪いものやはがれやすいものがある等の問題がある。
視覚障害者誘導用ブロック等(第4章 JIS T 9251参照)
○線状ブロック(誘導) ○点状ブロック(警告・注意・喚起)
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② 敷設方法
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視覚障害者が方向を見失い、場所の認知が困難になる場合があるため、視覚障害者誘導用ブロック等の敷設方法は、可能な限り下記に示す標準的な敷設方法とする。
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利用者を混乱させないよう、視覚障害者誘導用ブロック等の敷設にあたっては、線状ブロック等と点状ブロック等を適切に組み合わせ、使い分ける。
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誘導の方向と線状ブロック等の線状突起の方向を平行にして、連続して敷設する。
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敷設幅は、30cm以上とする。
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原則として湾曲しないよう直線状に敷設し、屈折する場合は直角に配置する。
留意点:視覚障害者誘導用ブロック等の敷設にあたって
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視覚障害者は、音、人の流れ、風、触知等を感じながら通行している。このような特性を踏まえつつ設計を行う必要がある。
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敷地内の通路上に設けられた桝蓋等により、視覚障害者誘導用ブロック等による誘導が途切れることがないよう、あらかじめ屋外計画や設備計画と調整を図ることが望ましい。
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屈折する場合に直角に配置するのは、全盲者が方向を間違えないよう配慮したものであるが、極端に遠回りの歩行ルートとならないように注意する。
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敷設位置は、壁・塀に近すぎないように余裕を確保した位置とする。また壁・塀の付属物や電柱等の路上施設に視覚障害者が衝突する場合もあり、敷設位置には十分注意する。
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クリーニング店のように出入口に近接して受付カウンターがある場合には、視覚障害者誘導用ブロック等が敷設されていなくてもアプローチできる。
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視覚障害者誘導用ブロック等は、車椅子使用者をはじめ、高齢者、杖使用者、肢体不自由者にとっては通行の支障になる場合もある。このため、視覚障害者誘導用ブロック等の敷設位置については、利用者の動線計画や案内表示板の位置等を考慮して、車椅子使用者等の動線と出来る限り干渉しない計画とし、視覚障害者の通行に支障とならない、車椅子使用者等の円滑な移動等が確保されることが望ましい。
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「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」も参考となる。
③ 敷設後の維持・管理
- 視覚障害者誘導用ブロック等の機能・効果が低下しないよう、継続的に適切な維持管理・保守を行うことが望ましい。
留意点:視覚障害者誘導用ブロック等の保守
- 視覚障害者誘導用ブロック等は使用しているうちに輝度比や色が劣化するため、定期的な保守・点検が重要である。
経路分岐点における標準的な敷設方法の例
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④ 単位空間ごとの敷設方法(視覚障害者等を誘導する経路以外での敷設)
- 視覚障害者に対し段差又は傾斜の存在の警告を行うため、階段又は傾斜路の上端に近接する廊下等の部分には、点状ブロック等を敷設する。(※4)
※4 以下の場合を除く。
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勾配が1/20を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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高さが16cmを超えず、かつ、勾配が1/12を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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主として自動車の駐車の用に供する施設に設けるもの
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視覚障害者に対し警告を行うため、傾斜がある部分の上端に近接する踊場の部分には、点状ブロック等を敷設する。(※5)
※5 以下の場合を除く。
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勾配が1/20を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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高さが16cmを超えず、かつ、勾配が1/12を超えない傾斜がある部分の上端に近接するもの
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主として自動車の駐車の用に供する施設に設けるもの
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傾斜がある部分と連続して手すりを設けるものである場合
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視覚障害者に対し警告を行うため、階段の段がある部分の上端に近接する踊場の部分には、点状ブロック等を敷設する。(※6)
※6 以下の場合を除く。
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自動車車庫に設けるものである場合
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段がある部分と連続して手すりを設けるものである場合
留意点:点状ブロック等の敷設
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段がある部分の上端に近接する踊場における点状ブロック等の敷設位置を、段鼻の直前とすると踏み外す危険があるため、30cm程度の余幅を取っておくことが必要である。
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点状ブロック等は階段の上端に敷設する他、階段の上端・下端を予告する意味で、階段の下端にも敷設することが考えられる。
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出入口等から階段まで連続誘導がなされている場合には、上端・下端ともに敷設することが望ましい。
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上記のほか、単位空間ごとの敷設方法については、以下を参照。
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2.3.1 建築物の出入口の設計標準(3)③
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2.4.1 屋内の通路の設計標準(3)③
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2.5.1 階段の設計標準(3)③
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2.6.1 エレベーターの設計標準(4)④
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2.6.2 エスカレーターの設計標準(1)⑤
単位空間ごとの敷設方法の例
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設計例
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⑤ 施設用途ごとの敷設方法
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不特定多数の人が利用する施設で広いロビーやホワイエがある場合、受付カウンター等の案内設備が建築物の出入口と異なる階にある場合等には、点字・音声等による案内設備又は案内所のほかに、エレベーターへの視覚障害者の誘導に配慮する。
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官公署等の日常的に不特定かつ多数な人が利用する施設では、点字・音声等による案内設備又は案内所のほか、エレベーター、階段、便所、福祉関係の窓口等の利用頻度が高いところまで、視覚障害者の誘導に配慮する。
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特別養護老人ホーム等、専ら高齢者が利用する入所型高齢者施設の廊下等では、視覚障害者誘導用ブロック等を敷設する代わりに、手すり・音声案内装置等を設けることも検討する。
留意点:建築物の用途による配慮
- 施設の用途により、敷設の考え方は異なる。手すり、音声を併用又は代替することによって、よりわかりやすくなる場合もある。
(3)音声等による誘導設備
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音声等による誘導設備は、施設用途や規模等を考慮した上で、また必要に応じて設けることが望ましい。
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音声等による誘導設備を設ける場合には、戸の直上に設けることが望ましい。
留意点:音声による案内
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音声等による誘導は開発途上であるため、今後、共通化、標準化を推進することが課題である。
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官公署等の日常的に不特定かつ多数な人が利用する施設では、敷地や建築物の出入口等に音声等による誘導設備を設置することが有効である。
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チャイム音のみでは敷地や建築物の出入口であることはわかっても、目的の建築物の出入口であるかどうかがわからないため、併せて建物名称等に関する内容を音声により案内することも有効である。
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音声等による誘導を行う場合、単純な音とし、同一建築物内においては統一することが望ましい。
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不特定多数の人を感知する人感センサーにより音声案内を行う機器等を用いる場合、音声情報はこれを利用しない人から過剰サービスと認識されることがあるため、障害者向けの案内であることを表示することも一案である。
留意点:出入口付近のチャイム等による目印
- 出入口付近で鳴るチャイム等は、視覚障害者等が道路を歩いているときに目的地や位置を把握するための目印になる。
設計例
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- 音声等による誘導設備は、音声がはっきりと聴き取れ、音声の発生場所が把握できるような指向性能を持つものが望ましい。
① 電波方式
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視覚障害者の持つ送信機と、施設側のアンテナ、主装置、固定スピーカーから構成される。
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視覚障害者が小型の送信機を持ち、送信機のボタンを押す、あるいは送信機が電波に反応することにより、送信機からアンテナに電波が送信され、主装置を介し、固定スピーカーから音声案内が行われる。
② 赤外線方式
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視覚障害者の持つ受信機と、施設側の電子ラベルから構成される。
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視覚障害者が小型の受信機を持ち、受信機のボタンを押すことにより、電子ラベルから赤外線で送信される情報を受信し、受信機のスピーカーあるいはイヤホンから音声案内が行われる。
③ その他の方式
- 上記の他に磁気センサーを用いた方式、人感センサーにより音声案内を行う方式、ICタグや携帯電話のGPS機能を用いて位置情報を得る方式等もある。
音声による誘導設備(電波方式)の例
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建築物等に設置された装置側から発信される電波の受信範囲に、専用の受発信機を持つ視覚障害者が入ると、受発信機が反応し、音声による情報を得られるシステム。
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まず受信範囲に入ると受発信機が反応し、音声案内を受けられることを知らせる。情報が必要であれば、視覚障害者が受発信機のスイッチを押すと電波が送信され、具体的な音声案内が放送される。
○システムのイメージ図 設計例
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設計例
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