店舗内部に共通する設計標準

2.12.1 店舗内部に共通する設計標準

(1)有効幅員、空間の確保等

① 店舗の出入口等

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  • 出入口の有効幅員は、80cm以上とする。

  • 2以上の出入口を併設する場合には、そのうち1以上の出入口の有効幅員は、90cm以上とすることが望ましい。

  • 店舗にバルコニー(避難用バルコニーを含む)、テラス等を設ける場合、バルコニー、テラス等への主要な出入口の有効幅員は、80cm以上とすることが望ましい。

  • 店舗の出入口や店舗内部の主要な経路に戸を設ける場合には、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないものとする。

  • 開閉動作から見ると、引き戸の方が開き戸より使いやすく、また自動式の方が手動式より使いやすい。

  • 物販店舗等の出入口の戸は、買い物袋と杖・白杖等を両手に持った高齢者、障害者等の利用にも配慮し、自動式引き戸とすることが望ましい。

  • バルコニー、テラス等への主要な出入口の戸は、車椅子使用者等が容易に開閉して通過できる構造とすることが望ましい。また、その前後に高低差がないものとすることが望ましい。

  • 出入口に設けるインターホンの周囲には、カートや搬入商品等の保管場所を設けない。

  • その他、店舗の出入口については、2.3.1 建築物の出入口の設計標準2.8.1 利用居室の出入口の設計標準を参照。

② 通路の有効幅員、空間の確保

  • 主要な経路[^1]上の通路には、25m以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所を設ける。

  • 25m以内ごとに設ける車椅子の転回に支障がない場所は、原則として140cm角以上とする。

  • 店舗の出入口、バルコニー等の外部への出入口、車椅子使用者が利用できる便房(車椅子使用者用便房、車椅子使用者用簡易型便房等)の出入口では、その付近に、車椅子使用者が方向転回できるよう水平なスペースを設けることが望ましい。

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・会計・相談カウンターの前やショーケースの前等、従業員と利用者が正対する通路の幅は、140cm以上とする。面積や構造による制約があり、やむを得ない場合は120cm以上とする。

  • 主要な経路上の通路には、段差を設けない。(傾斜路又はエレベーターその他の昇降機を併設する場合を除く。)

  • 主要な経路上の通路に傾斜路を設ける場合、傾斜路の幅は90cm以上とし、傾斜路の勾配は、1/12を超えないものとする。高さが16cm以下のものにあっては、1/8を超えないものとすることができる。

  • 傾斜路の勾配が1/12を超え、又は高さが16cmを超える傾斜がある部分には、手すりを設ける。

  • エレベーターについては、2.6.1 エレベーターの設計標準、エスカレーターについては、2.6.2 エスカレーターの設計標準を参照。

  • その他の昇降機(段差解消機)については、2.14 B段差解消機を参照。

  • 主要な経路上に設ける出入口の有効幅員は、80cm以上とする。

  • 主要な経路上の通路には原則として、壁からの突出物を設けない。

  • やむを得ず、床から高さ65㎝以上の部分に壁から突出物を設ける場合は、視覚障害者の白杖の位置に配慮し、突き出し部分を10㎝以下とする。

  • 通路沿いに設ける設備機器・備品(消火器、冷蔵庫、棚等)は、有効幅員の確保や手すり・壁による視覚障害者の連続的な誘導の妨げにならない位置に設ける。

設計例

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ア.物販店舗の通路

  • 主要な経路上の通路で商品棚間の有効幅員は120cmとする(車椅子使用者が商品を取り出しやすいようにする)。ただし、片側商品棚の場合は90cm以上とする。

  • レジカウンター前のレーンは、1レーンに対して車椅子使用者等が通れる有効幅員90cm以上を確保する。

物販店舗の通路の例

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物販店舗のレジ前の通路の例

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設計例

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イ.飲食店舗・サービス店舗の通路

  • 主要な経路上の通路の有効幅員は、90cm以上とする。飲食店舗の場合は椅子に座った状態でも90㎝以上を確保する。

  • 横向きの人と車椅子使用者のすれ違いがある通路については、120cm以上とすることが望ましい。

  • 飲食店舗の配膳カウンター前の通路は、カウンター待ちの背後の通行を考慮し、150~180cm程度を確保する。

飲食店舗の通路の例

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設計例

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③ 待合

  • サービス店舗や飲食店舗等の待合には、高齢者、障害者等の休憩の用に供する設備(ベンチ等)を設ける。

  • 車椅子使用者や乳幼児連れの利用者(ベビーカー)に配慮したスペースを確保する。(ベンチ等の移動による対応も可とする。)

  • 車椅子使用者に配慮した待合スペースの幅は、車椅子1台につき90cm以上とし、奥行きは120cm以上とする。(可動式の椅子を取り外してスペースを設けることも可能とする。)

④ 便所、洗面所

(2)部品・設備等

① 会計(レジ)、サービスカウンター

  • 円滑なお金のやりとりができるよう、全てのレジは、利用者から金額表示が見えるようにする。

  • 以下の場合には、立位で使用する会計カウンターのほかに、高齢者、障害者等が利用できるローカウンターを1以上設ける。

  • 物販店舗で、複数の会計カウンターがある場合

  • 多数の高齢者、障害者の利用が想定される建築物(病院等)にある店舗

  • 無人レジ(セルフレジ。顧客が自分で商品バーコードをスキャンして会計をするレジ)のみの店舗

  • 高齢者、障害者等が利用できるローカウンターの下端の高さは65~70㎝程度、上端の高さは70~75㎝程度、カウンター下部スペースの奥行きは45㎝以上とする。

留意点:杖・傘ホルダー

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  • レジやサービスカウンターにおいて、高齢者、障害者等の杖利用者が杖を置くことができる、杖ホルダーを設置又はテーブルの一部にくぼみ等を設けると使いやすい。

  • サービスカウンターを設ける場合には、車椅子使用者をはじめ、高齢者、障害者等が利用しやすいローカウンターを1以上設ける。

  • 高齢者、障害者等が利用できるローカウンターの下端の高さは65~70㎝程度、上端の高さは70~75㎝程度、カウンター下部スペースの奥行きは45㎝以上とする。

  • カウンター・記載台については、2.14 C カウンター・記載台・作業台・事務机等を参照。

会計カウンターの例

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設計例

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② 発券機(番号札、食券等)、給茶機、自動販売機、ATM(現金自動取引装置)

③ 乳幼児用設備

  • 授乳のためのスペースを設けることが望ましい。

  • 授乳のためのスペースには、授乳のための椅子、乳幼児用おむつ交換台等を適切に設ける。

  • その他については、2.14 F 乳幼児用設備を参照。

④ 照明

  • 通行に支障のない明るさ、むらのない明るさを確保できるよう、照明設備を設ける。

(3)仕上げ等

  • 床の表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げる。

  • 床の表面は、転倒に対して衝撃の少ない材料で仕上げることが望ましい。

  • 車椅子の操作が困難になるような毛足の長い絨毯を、床の全面に使用することは避ける。

(4)案内表示・情報伝達設備等

  • エレベーター、便所の付近には、エレベーター、便所があることを表示する表示板(標識)を設ける。

  • 表示板は、高齢者、障害者等の見やすい位置に設ける。

  • 表示板は、ピクトグラム等の表示すべき内容が容易に識別できるもの(当該内容がJIS A 8210 案内用図記号に定められているときは、これに適合するもの)とする。

  • 案内表示等は、視覚障害者や車椅子使用者が認識しやすいよう、取り付け位置・高さ、照明等に配慮したものとする。

留意点:供用開始後の商品量の増加にも対応した案内表示の設置

  • 物販店舗の売り場の案内表示等は、供用開始後に商品量が多くなった場合でも車椅子使用者等が認識しやすいよう、あらかじめ取り付け位置・高さに配慮したものとすることが望ましい。

  • 案内表示等は、大きめの文字を用いる、漢字以外にひらがなを併記する、図記号等を併記する等、高齢者、障害者等にわかりやすいデザインとする。

  • 壁、床、天井等に設ける案内表示は、文字・図記号と、図、背景の色の明度、色相又は彩度の差を確保したものとする。

留意点:床サイン表示等の維持管理

  • 床サイン表示等については、汚れや摩耗等へのメンテナンスに留意する。

  • 案内板・表示板等については、2.14 G 案内表示を参照。