2.13.1 避難設備・施設の設計標準
(1)有効幅員、空間の確保等
① 避難経路の空間の確保等
- 車椅子使用者の通行の支障になるだけでなく、高齢者や妊婦、肢体不自由者等がつまずいて転倒する危険性があるため、避難経路となる屋内の通路には段を設けない。
留意点:避難経路の段
- 段は、高齢者、障害者等には通行の支障となり、特に緊急時にはより深刻な障害となる。したがって屋内の通路の避難経路には段を設けない。
留意点:バルコニー
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バルコニーを連続させ、隔板を高齢者、障害者等が破りやすくすると、避難上有効である。
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利用居室や屋内の通路から段差なしに出入りでき、車椅子使用者が通行可能な幅員のバルコニーを設けると、車椅子使用者もより避難しやすくなる。
② 一時待避スペースの確保等
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施設規模・用途等を考慮した上で、安全に救助を待つための一時待避スペースを設けることが望ましい。
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一時待避スペースは、階段の踊場、階段に隣接したバルコニー、階段付室等の一部に、避難動線の妨げとならないように設け、その旨表示する。
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一時待避スペースの構造は、十分な耐火性能や防火性能等を有するものとする。
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一時待避スペースには、車椅子使用者が待避するのに十分な空間を確保する。
階段の一時待避スペースの例
バルコニーの一時待避スペースの例
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付室内の一時待避スペースの例
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留意点:防火戸等の柱・枠
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エレベーターの防火区画を乗降ロビーに設けた防火戸で行う場合、防火戸の枠や柱が視覚障害者の歩行の障害になるだけでなく、衝突の危険がある。
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そのため、できる限り設けない区画設計が望ましい。
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エレベーターの防火区画を乗降ロビーに設けた防火戸で行う場合、防火戸や防火シャッターの柱や枠が避難を妨げないようにすることが望ましい。
設計例
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(2)部品、設備等
- 一時待避スペースには、助けを求めたり状況を伝えたりするために、中央管理室又は防災センターに連絡可能なインターホンを設けることが望ましい。
(3)案内表示、情報伝達設備
① 一時待避スペースの表示
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一時待避スペース設ける場合は、出入口の戸等に一時待避スペースである旨の標識及び文字板を設ける。
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標識には補足表示板を設けることが望ましい。
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表示板等については、2.14 G 案内表示を参照。
一時避難エリア標識及び補足表示板の例
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出典:高層建築物等における歩行困難者等に係る避難安全対策:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-yobouka/data/high-rise03.pdf (opens in a new tab)
一時避難エリアである旨を記した文字板の例
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出典:高層建築物等における歩行困難者等に係る避難安全対策:東京消防庁 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-yobouka/data/high-rise03.pdf (opens in a new tab)
② 火災警報装置
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火災警報装置を設ける場合には光警報装置とする等、聴覚障害者に館内放送やアナウンス、サイレン等の音声情報を光・振動等による情報や文字等の視覚情報に変換して伝えることができるように配慮する。
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聴覚障害者等への非常時の情報伝達方法には、主に以下の方法がある。
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光警報装置(フラッシュライト等)の設置
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室内信号装置※の設置・貸出し等(ホテル又は旅館の客室等)
※ドアノック、ドアベルやインターホン、電話の着信、目覚まし時計のアラーム等の音等を感知して、時計等の受信機器の光の点滅(フラッシュ)や振動等により、視覚情報や体感情報として伝える機器
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電子メールや振動機能のついた携帯電話等、視覚障害者に対しては、音声読み上げ機能のついた携帯電話等を活用すること等も有効である。
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ホテル又は旅館の客室に設ける火災警報装置については、2.9.1客室の設計標準(3)⑤を参照。
留意点:火災の発生を視覚的に伝達する手段
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火災の発生を視覚的に伝達する手段としては、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)で点滅機能を有する誘導灯が規定されているとともに、2016年には「光警報装置の設置に係るガイドライン」(平成28年9月6日付け消防予第264号)が策定されている。
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聴覚障害者に対応した火災警報設備等に関しては、「ユニバーサルデザインを踏まえた火災警報設備等の導入・普及のあり方に関する報告書」総務省消防庁(平成23年4月)の内容も参考となる。 http://www.fdma.go.jp/concern/law/tuchi2809/pdf/280906_yo264.pdf http://www.fdma.go.jp/html/data/tuchi2304/pdf/230425-index.pdf
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一般社団法人 日本火災報知機工業会では、「光警報装置のおすすめ」のパンフレットを作成、公開している。 https://www.kaho.or.jp/pages/jikaho/docs/poster/booklet-hikari-keihou-201708.pdf (opens in a new tab)
留意点:外国⼈来訪者や障害者等に配慮した⽕災時等の情報伝達・避難誘導を⽬的とするデジタルサイネージ活⽤指針
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消防庁では、外国人来訪者や障害者等に対しても有効な情報伝達及び避難誘導を行うため、消防法令に規定されている消防用設備等や光警報装置を補完するものとしてデジタルサイネージの活用促進を図ることを目的として、「外国人来訪者や障害者等に配慮した火災時等の情報伝達・避難誘導を目的とするデジタルサイネージ活用指針」を2018年3月に作成した。
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本指針では、火災時等にデジタルサイネージを活用する際に「原則として対応することが望ましい基本的事項」と「各施設の実態や技術の発展状況等により可能であれば対応することが望ましい事項」が分けて記載されている。 http://www.fdma.go.jp/neuter/about/shingi_kento/h29/gaikoku_hinan/houkoku/katsuyou_shishin.pdf
便所のフラッシュライト(光警報装置) 設計例
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出典:公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン バリアフリー整備ガイドライン 旅客施設編 令和2年3月 国土交通省総合政策局安心生活政策課 p.155)
③ 避難誘導のための情報伝達設備
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聴覚障害者に配慮し、文字表示・図記号等による誘導表示を設ける。
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視覚障害者等に配慮し、音声による誘導を行うことが望ましい。
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煙を避けるために低姿勢をとっても避難すべき方向がわかるよう、床面や腰の高さに、誘導灯や光点滅走行式避難誘導システム(一定の間隔で設置した光源列を火災時に避難方向に流れるように点滅させることで避難方向を示す装置)、蓄光性のある誘導タイル等を設置することが望ましい。
留意点:緊急避難時の誘導システム
- 光走行式の緊急避難時の誘導システムは、聴覚障害者、弱視者(ロービジョン)だけでなく、誰にとっても有効である。
留意点:火災時の聴覚障害者の避難誘導
- 火災時の聴覚障害者の避難誘導に関しては、「旅館・ホテルの火災時等における聴覚障害者への情報伝達手段のあり方」総務省消防庁(平成17年3月)の内容も参考となる。
点滅式誘導音付加誘導灯の例
点滅型誘導灯(点状直付型)
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床埋め込み型誘導灯
設計例
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④ 非常放送設備
- 非常放送設備を設置する建築物については、 視覚障害者・聴覚障害者に配慮した光、文字、音・音声等による非常放送設備を併設することが望ましい。